「こんにちは」
「こんにちは。でも私はあなたを知らないよ」
「私だって」
「じゃあ初めまして、かな」
「わざわざ言い直さなくていいんじゃない?こんにちは、だってちゃんとした挨拶だよ」
「でも、話す態度が違うでしょう」
「何が違うの?知っていようが知っていまいが、どうせ他の人だよ」
「知っていれば、そんなに気を遣わなくても済む」
「そんなに、ってことは必ず少しは気を遣わなくちゃいけないじゃん」
「まあね」
「だったら同じだよ。何を考えているか分からない、他人」
「傷つけないように気を遣って、傷つけられないように気を遣わないといけない?」
「そうそう、そういう他人。同じような生物で、同じような言葉を話しているだけ」
「うーん、この考えは、少し寂しいね。心が冷たくなってきた」
「心が冷たくなってるなんてそれこそ分からないよ」
「まあ……。でも、そんな気がするよ」
「気のせいでしょ」
「言われてみると、自信が無くなってきたよ」
「自信なんてなくったっていいよ。自分がそう思うならそれでいい」
「手のひら返しじゃないか。さんざん私を非難したくせに」
「非難なんてしてないよ。こうも考えられないか、っていうだけ」
「それを非難っていうのさ」
「ちょっと提案しただけじゃん」
「私は自分大好きだから。人に口出しされるのは好きじゃない」
「あれれ、そうなんだ。ふーん」
「なに」
「自分はぺらぺら話すのに、人に話されるのは嫌なんて、とんだ自己チュー」
「それが普通でしょ。みんな多かれ少なかれそんなものさ」
「ほらね、やっぱりみんな一緒……」
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